ボラティリティの定義

ボラティリティの意味は「変動率」です。

株やFXなど、値動きのある商品がどのくらい動いているか、というのがボラティリティの意味です。

一定の期間を決めてその間の値動きをボラティリティと言い、通常は1年にどれくらい動くかという年率の動きとするのが一般的です。

以下に2つのグラフを見てください。
AよりもBの方が価格が大きく動いているのがわかると思います。
こういう時に「株価Bのボラティリティは株価Aのボラティリティよりも大きい」と言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は株価Bのグラフは株価Aの値動きを単純に3倍したものです。
上げ下げのタイミングは同じでも、ボラティリティの違いにより、リスクが大きく違って見えることがわかります。

現実世界で言うと、動きの小さい日経平均と動きの大きいマザーズ指数のような関係です。
どちらも週間ベースや月間ベースでみると同じ方向に上げ下げすることが多いものの、上げ下げの幅はマザーズの方が激しいことが普通です。

このように上げ下げとは関係なく、上げ下げの幅が大きいか小さいかを表す指標がボラティリティになります。

ボラティリティをどう定義すると扱いやすいのか

では上げ下げの方向は関係なく、その上下の大きさがボラティリティとするのであれば、どのように定義すると扱いやすくなるかを考えます。

扱いやすいというのは、各種の計算や既に学問として確立されている統計的手法を当てはめやすくなる、という意味です。

確率統計の世界は学問的にいろいろな手法を発見してきました。
その便利な手法をボラティリティの計算にも使えるようにすると便利だということです。

統計の世界で変動率、変動幅を表すものとして一番使われているのは、「標準偏差」という概念です。
株価の変動率であるボラティリティをこの標準偏差で表すと便利なことがいくつもあります。

例えば標準偏差という概念を使うことで、株価の動きを既存の正規分布や対数正規分布として扱うことができます
(株価の動きを対数正規分布と仮定したから標準偏差とする、という方が自然ではあります。)

ボラティリティを標準偏差とすれば、株価の動きが正規分布と仮定してリスクを計算したり、オプションの価格を計算したりできます。

株価の動きを対数正規分布、その標準偏差をボラティリティとして、確率微分方程式で表現したものがブラック・ショールズ式です。

オプション価格を計算するにはブラック・ショールズ式を使うという前提で、
株価のボラティリティはその株の値動きの標準偏差、
と定義します。

ボラティリティの計算方法

ボラティリティの計算方法については大きく分けて2つの方法があります。

1つはヒストリカル・ボラティリティ(historical volatility)という株価の過去データを使う方法、
もう一つはインプライド・ボラティリティ(implied volatility)というオプションの価格を使う方法です。

ヒストリカル・ボラティリティ

ヒストリカル・ボラティリティは過去の株価がどのくらい変動していたか、という計算をしたものです。
前に書いた通り、株価の終値から日々の株価のリターンを計算し、その標準偏差を取ります

過去データを使って計算しているものですから、ヒストリカル・ボラティリティが表しているものは、過去の値動きがどうだったか、という数字です。

未来についてはわからないものの、過去はこの程度の動きだった、ということを表しています。

未来がわからないとしょうがない、と思うかもしれませんが、現在大きく動いている株であっても落ち着けばいつもの動きに戻る、と考えることもあるでしょう。

この「落ち着いた時のいつもの動き」こそが長期のヒストリカル・ボラティリティになります。

例えば日経平均について言えば、過去数十年でデータを取ると年率20%程度のボラティリティになっています。
年によって違いますが、普通の年であれば20%程度は日経平均は動く、と考えていて間違いないでしょう。

未来の値動きはわからないが、過去の値動きの平均を見ることでその資産の固有のボラティリティが推測できる、
というのが、ヒストリカル・ボラティリティの一番大事な点になります。

また過去の平均と較べて直近の変動が大きいのであれば、そのうち平均程度まで落ち着くはずと考えられます。
逆に過去と比べて直近の変動が小さいのであれば、動き出したら平均程度か、
これまでの平均以下のデータを調整するためにも平均以上の動きになってもおかしくない、とも考えられます。

現時点の値動きである短期のヒストリカル・ボラティリティが、その金融資産の過去の値動きの平均である長期のヒストリカル・ボラティリティと較べてどうなっているか、
ということは投資を行う上で参考になります。

実際の計算方法については、下記の記事を参照してください。

エクセルでヒストリカル・ボラティリティを計算してみよう

インプライド・ボラティリティ

インプライド・ボラティリティはオプションの価格から計算される数値です。

ブラック・ショールズ式は標準偏差をボラティリティとしてオプション価格を計算するものです。

オプション価格を計算する時に入れるべき標準偏差であるボラティリティは、今日から満期までの間に株価がどのくらい動くかという未来のボラティリティであるべきです。

過去のデータから計算されるヒストリカル・ボラティリティは参考にはなりますが、もちろん未来の値動きは別物です。

例えば雇用統計の数値次第ではドル円が一気に2円くらい動いても不思議はない、という時に、過去の値動きを使ってオプション価格を計算するのはあまりいい方法ではありません。

現実世界では投資家は今後の値動きを予想してオプションを売買しますから、その予想や需給関係に基づいて価格が形成されます。

ボラティリティはわからなくても、需給関係からオプション価格は存在するわけです。

その現実世界で売買されているオプション価格を使ってボラティリティを計算しようというのが、インプライド・ボラティリティです。

本来のブラック・ショールズ式は、
ボラティリティがわかる → オプション価格が計算できる、
という関係です。

しかし、オプションが現実に売買されて値段がついているということは、ブラックショールズ式を使って、
オプション価格がわかる → ボラティリティが逆算できる、
という関係が成り立ちます。

このようにオプション価格から逆算されて出てきたボラティリティの数値のことを、インプライド・ボラティリティと言います

オプションの価格はマーケットの需給関係で決まるので、
インプライドボラティリティはオプションを売買しているマーケット参加者が予想している株価の変動率
と言うことができます。

つまりオプション市場の参加者が、
将来の変動率が高いと思えばオプション価格が上がりますし、
将来の変動率が低いと思えばオプション価格は下がります。

インプライド・ボラティリティは取引参加者が予想している将来の変動率を表している、ということになります。

オプション価格からボラティリティを計算する方法は大きく分けて2種類あります。

一つは今説明したブラックショールズ式からの逆算を利用したインプライド・ボラティリティ
もう一つはオプション価格そのものから計算するVIX指数などのボラティリティ指数です。

VIX指数や日経IV指数の計算方法については、取引所や日経のホームページで確かめることができます。

どちらの数字も年率換算したものになっていますので、計算方法に違いがあり、数字も若干変わるものの、
普通のオプション・トレードをする上ではどちらも一緒のものとして扱っても問題ありません。

自分でインプライド・ボラティリティを計算するくらいオプション・トレードを深くやっているのであれば、
自分の計算したインプライド・ボラティリティをトレードに使うのがよいでしょう。

もし特別なマーケット環境の時だけ現物株のヘッジとしてオプションを使うというのであれば、VIXや日経IVなど入手の簡単な指数をトレードに使うので十分です。

あなたのトレードスタイルや必要性に応じて使い分けてください。

ボラティリティから見える需給構造

実際にインプライドボラティリティを計算すると行使価格や満期のちがいによって、計算される値にばらつきがあるのがわかります。

権利行使価格と満期を横軸に、インプライドボラティリティを縦軸にしてグラフを描くと、インプライドボラティリティは一定の平面になるのではなく曲面になります。

そのような曲面を「ボラティリティサーフェイス」と言います。
下図は少し見にくいですが、ボラティリティサーフェイスの一例です。
あとで分解して見やすくしますので、今は曲面になっていることに注目してください。

 

 

 

 

 

 

本来ボラティリティは対象となる一つの原資産が決まれば一つに決まるはずのものです。
一つであれば行使価格や満期にかかわらず例えば15%などといった一定の値になるので、グラフは平面になるはずです。

しかし現実には満期や行使価格によってボラティリティはいろいろな値にばらつき、平面にならずに曲面になります。

ブラック・ショールズのモデルでは、株価の動きは対数正規分布し、その値動きを標準偏差として表しました。
しかし実際の株価の動きは対数正規分布に従いません

この実際の株価の動きとモデルの仮定する対数正規分布との違いが、ボラティリティ・サーフェイスという形で現れてきます。

ボラティリティ・サーフェイスの特徴は、対象となる原資産(アンダーライイング)によって変わってきます。
日経225オプションの場合、あまり動かない平常時にはインプライド・ボラティリティは、以下のような3つの性質があります。

  1. 満期の短いオプションのインプライドボラティリティは満期の長いオプションのものよりも低い(期間構造)
  2. 行使価格の高いオプションのインプライドボラティリティは行使価格の低いオプションのものよりも低い(Skew, Skewness)
  3. アット・ザ・マネー(現値付近の行使価格)のオプションのインプライドボラティリティが一番低い(Kurtosis)

基本的には日経に限らず、他の資産のボラティリティサーフェイスも同様に1から3の性質があります。

ただし2のSkewについては、ドル円の場合は円安方向のボラティリティが円高方向のものより低い、
となるように、為替については通過の組み合わせによって変わってきます。

金利については、債券価格が上昇する方向か下落する方向かによってSkewが生じます。

ではこれら1から3の性質について、1つ1つ見ていきましょう。

期間構造

ボラティリティの期間構造は、満期までの残存期間の違いによるインプライド・ボラティリティの違いです。

日経225指数オプションや、S&P500指数オプションの場合、通常の環境では、
短い期間のインプライド・ボラティリティは長い期間のものよりも低くなる傾向があります。

下図は期間構造のサンプルです。

 

 

 

 

 

通常時と逆にマーケットが混乱しているときなどは、短い期間のインプライド・ボラティリティの方が高くなります。

基本的に満期の長いオプションは大数の法則に従って、過去データであるヒストリカル・ボラティリティに、
収れんしていくと考えられるので、日経でいうと15%程度を目安にあまり動かないことが多くなります。
長いオプションは日経で言うと1年以上といったところになります。

一方で、短いオプションは
マーケットが全く動かない状況であれば、過去データよりも低いインプライド・ボラティリティで売買され、
マーケットが大きな動きをしていれば、過去データよりも高いインプライド・ボラティリティで売買されます

このため通常時は短い満期のオプションのインプライド・ボラティリティは満期の長いオプションのものより低くなり、
混乱が起きていれば短い満期のオプションのインプライド・ボラティリティは満期の長いオプションのものより高くなる
という傾向になっています。

また満期までの間にどういったイベントがあるかでもインプライド・ボラティリティは変化します。

直近のマーケットは静かな動きであっても、重要な経済イベントなどが控えていると将来の値動きに対応して、
短い満期のオプションのインプライド・ボラティリティは上昇します。

重要な経済イベントを控えているときに、インプライド・ボラティリティの期間構造を見るとその経済イベントが、
どのくらいの波乱の可能性を持っているとマーケット参加者が考えているか、がわかります。

FOMCや日銀金融政策決定会合などのイベントは毎回その重要性が違いますが、オプション・マーケットを観察することで、
参加者がどの程度の重要性を考えているかがわかります。

マスコミの報道ほど重要性がないとオプション・マーケットが語っているときもありますし、
その逆でマスコミなどが注目していない割に高いインプライド・ボラティリティになっていることもあります。

ただしインプライド・ボラティリティの形状からわかることは、参加者が重要と考えているかどうかの度合いであって、未来の結果ではありません。

むしろインプライド・ボラティリティの形状から、参加者が重要と考えていない時にサプライズが起こるとその後の混乱は大きくなり、かつ長引く、ということもあります。

ボラティリティの形状をどう解釈し、どうトレードに活かしていくかは、それぞれの投資家の経験やスキルによります。

Skew (ボラティリティ・スキュー)

Skewは行使価格の違いによるインプライド・ボラティリティの違いです。

通常、ダウンサイドの行使価格のオプションは高いインプライド・ボラティリティになり、
アップサイドの行使価格のオプションは低いインプライド・ボラティリティになります

下図はSkewのサンプルです。

 

 

 

 

 

Skewが形成されるのには、2つの理由があります。

  1. マーケットは上昇はゆっくり、下落は速い、ということが統計的に裏付けられていること
  2. オプションに対する最大のニーズは保有株式に対するヘッジなので、
    ダウンサイドのプットは買いニーズが強く、アップサイドのコールは売りニーズが強い傾向がある

1については、過去データを検証した研究が多数ありますし、トレーディングをしていれば感覚的にも納得できるものです。

2のヘッジニーズについては、リスク・リバーサルと呼ばれる取引戦略があります。
為替の世界の世界では普通の取引ですが、プット買い、コール売りを組み合わせたヘッジ戦略です。
このリスク・リバーサルの価格が為替の世界ではそのままSkewの目安になっています。

ちなみに上場オプションが中心の株の世界では、満期までの残存期間によってもオプションの価格が変わるので、
為替の世界のように単純にオプションの組み合わせの価格をSkewの目安にするのは難しくなっています。

下図はリスク・リバーサル(20%アウト)の最終損益図です。
20%アウトというのは、ATMから見て20%上の権利行使価格のコールと20%下の権利行使価格のプットを組み合わせたものという意味です。

 

 

 

 

 

 

通常はプット買い、コール売りの組み合わせをリスクリバーサルの買いといいます。
なぜなら通常プットサイドの方が価格が高いので、プット買い、コール売りは支払いになるからです。
上の図はコストを入れると、最終損益線は下にズレます。

Skewはマーケットがどのくらいダウンサイドに対して警戒感があるかを見る目安になります。

マーケットが混乱すると多くの人が考えると、ダウンサイドのプットの需要が大きくなり、プットのインプライド・ボラティリティが高くなり、Skewも大きくなります。

混乱が落ち着いてくるとプットの需要が小さくなりSkewは小さくなります。

通常、Skewが大きくなることを、Skewがスティープニングする(Steepening)といい、
Skewが小さくなることを、Skewがフラットニングする(flatening)といいます。

Skewは上の行使価格と下の行使価格のインプライド・ボラティリティの差(傾き)を表すので、急になる、平らになる、という用語を使います。

Kurtosis(カートシス)

Kurtsisは、アット・ザ・マネーが行使価格のオプションのインプライド・ボラティリティが一番低くなり、
アット・ザ・マネーから行使価格が遠くなるファー・アウトのオプションほど、
インプライド・ボラティリティが高くなる、という性質です。

下図はSkewのサンプルです。
対数を利用しているので左右対称にはなっていません。

 

 

 

 

 

ATMである100を底にして、外側に行くほどインプライド・ボラティリティが高くなっている様子がわかります。

Kurtosisは、現在の価格から非常に大きな動きがあると予想されると高くなる性質を持っています。

現在の価格から離れた行使価格であるファー・アウトのオプションは、
売り手に取っては受け取りプレミアムが小さく、何か大きなことが起こった場合のリスクは大きいポジションです。

ですから通常時であっても、ファー・アウトのオプションの売り手は少ないため、
需給関係からファー・アウトのオプションのインプライド・ボラティリティが高くなり、
Kurtosisが存在することは自然なことと言えます。

Kurtosisが大きくなる(アット・ザ・マネーとファー・アウトのインプライド・ボラティリティの差が大きくなる)ということは、
ファー・アウトのオプションの売り手が、リスクプレミアムの上乗せがないと売ることができない状況になっているということです。

Kurtosisは通常時にはあまり大きく変化しませんが、やはり大きなイベントがあると大きくなります。
特にリーマンショックなどの大きな暴落があった場合には、ダウンサイドのプットはこんな行使価格のものまでと思うようなプットにもそれなりの値段が付くようになります。

ただしKurtosisは通常のオプション取引を行っている分には意識することはないと思います。
ファー・アウトのオプションが必要になるエキゾチックもののデリバティブのヘッジやプライシングにおいては重要ですが、通常の取引では意識する必要はそれほどありません

まとめ

ボラティリティは、金融商品の値動きの激しさをあらわします。

通常は扱いやすいこともあり、統計で使う標準偏差を利用して定義します。
日次ベースのボラティリティは、日々のリターンを計算し、その標準偏差を計算することで定義されます。

ボラティリティを数式で定形化することで、ブラック・ショールズ式を使ってオプションの理論価格を計算できるようになりました。

ボラティリティには2つのボラティリティがあります。
一つは過去データを使って計算するヒストリカル・ボラティリティ、もう一つはブラック・ショールズ式を使ってオプション価格から逆算されるインプライド・ボラティリティです。

インプライド・ボラティリティを計算すると、行使価格や満期によりボラティリティが違います。
これを3次元のグラフにしたときに、ボラティリティ・サーフェイスと呼ばれる曲面が作成できます。

このボラティリティ・サーフェイスは、

  1. 満期までの期間によってインプライド・ボラティリティが変わる期間構造という性質
  2. アップサイドのコールオプションは、ダウンサイドのプットおオプションよりも
    インプライド・ボラティリティが低いSkewという性質
  3. アット・ザ・マネーのインプライド・ボラティリティが一番低いKurtosisという性質

という3つの性質を持っています。

そしてそれぞれの性質は、取引参加者が将来のマーケットに対してどのような予測をしているかが需給として反映されたものになっています。

ボラティリティをトレードに利用しよう

ここまでにあるように、オプション・ボラティリティの世界は非常に複雑ですが、
一つ一つを理解し、丹念に動きを追いかけることで通常の情報とは違う見方ができるようになります。

「匠のオプション」で検索していただけると、こういったボラティリティを自分でエクセルで計算するための講座などを用意しています。

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